ミャンマーの基本情報

面積67.66平方キロ(日本の1.79倍)(The World Fact Book(WFB))
人口5,337万人(2017年、国連推計)
首都ネーピードー(103万人、2015年推計、世界年鑑)
主要都市ヤンゴン480.2万人、マンダレー116.7万人(2015年推計、世界年鑑)
主要言語公用語:ビルマ語、他に多数の民族語
民族ビルマ族約68%、ミャン族9%、カレン族7%ほか少数民族(WFB)
宗教仏教89%、キリスト教、イスラム教
GDP約670億ドル(2017年) ※産業分野別比率は本文第5項参照
一人当りGDP1,272ドル(2017年)
労働力人口3,045万人(2015年、ILOデータベース) ※産業分野別比率は本文第5項参照
産業別分布(%)農業26.7%、製造業34.5%、サービス業38.7%(2015年、(公財)国際金融情報センター各国情報より)
IL0中核8条約要批准総数24、中核8条約:批准3、未批准5(98、100、105、111、138)(2018年)
通貨100チャット=8.09円 1米ドル1,343チャット(2018年前半平均、IMF)
政治体制共和制
国家元首ティン・チョー大統領(2016年3月就任)
議会二院制(上院、下院)
行政府大統領が閣僚任命、首相なし。
主な産業農業
対日貿易輸出1160億円 輸入988億円(2017年財務省統計)
日本の投資116億円(2017年、財務省資料)
日系企業数376社(2018年5月、現地商工会会員数)
在留邦人数2,315人(2017年、外務省統計)
気候熱帯性気候 雨期5~9月
日本との時差-2.5時間
社会労働情勢概要・2016年に総選挙による新政権発足。スー・チー氏は、国家最高顧問、外務大臣等。約半世紀ぶりに国民多数支持の政権発足、民主化定着、国民和解、経済発展に取組む。

・経済は、縫製産業の拡大などにより堅調な成長を続ける。労働者の低賃金などを背景とする外国企業の進出が続いている。

・2018年に最低賃金制度が導入された。現状では多くの労働者が低収入、長時間労働を強いられている。労働安全衛生対策が不十分なところが多い。

・労働組合はミャンマー労働組合連合(FTUM)を軸に、活動の強化と組織の拡大に乗り出している。ITUCは支援のため現地事務所を設置している。
主な中央労働団体ミャンマー労働組合総連盟(CTUM:Conderation of Trade Unions-Myanmar)
労働行政ミャンマー労働・入国管理・人口省(Ministry of Labour, Immigration and Population)
中央使用者団体ミャンマー商工会議所(UMFCCI: Union of Myanmar Federation of Chambers of Commerce and Industry)
最終更新日2018年 9月 30日
主要統計 (GDP)
201220132014201520162017
GDP成長率7.38.37.776.17.2
一人当たりGDP(ドル)83411131221114712321272
物価上昇率(%)2.85.75.911.57.01.5
失業率(%)4.04.04.04.04.04.0

政治と社会の動向(1945年以降)

ミャンマーの基本情報














2.国家統治機構
元首
 大統領。上下両院の全員投票で選出。任期5年で三選禁止。現在は、ティン・チョウ大統領

議会
上院(民族代表院)定数224(選挙議席168、軍人代表議席56)
下院(国民代表院)定数440(選挙議席330、軍人代表議席110)
政党(下院)
[与党]  国民民主連盟(NLD)255、ほか。
[野党] 連邦団結発展党30など。
行政
内閣は大統領が議会の承認を得て任命。首相なし。大統領府のもとに約30の省庁がある。スーチー氏は国家顧問。
司法
三審制。中央に最高裁、州・郡に下級裁。
地方行政
7地域と7州。地域はヤンゴン、マンダレーなど。州はカチン、カレンなど。
3.政治体制
政体
大統領制の共和制。ただし、上下両院のそれぞれ4分の1は軍人枠である。
主な政党
国民民主連盟
(NLD) 1988年、民主化運動のなかで結成。1990年の30年ぶりの複数政党の総選挙で大勝したが軍事政権が結果を拒否。その後も民主化を求める運動を続けた。2015年総選挙で勝利、政権与党となる。スーチー氏は党首兼書記長。
連邦団結発展党
(USDP) 2010年、軍事政権を支えた大衆団体である連邦団結発展協会(USDA)の後継組織として設立。本部はヤンゴンにあり全国規模の組織が機能している。テイン・セイン氏が党首。なお、USDAは軍部関係者により1993年に設立された。
4.人口動態
総人口は5,337万人(政府人口センサス・2014年から国連推計)である。また、都市部の人口は総人口の30%であり、農村部に残りの70%が居住している。これは低開発国の水準(31.4%・国連統計)とほぼ同等でありミャンマーでは都市化が進行していない。なお、2014年の人口センサスは1984年以来、31年ぶりに行われたものである。
5.産業構造と就業構造
主要産業
従来の主要な産業は農業であるが、製造業、サービス業も拡大している。GDPの産業別比率はサービス業等40%、製造業等35%、農業等258%である(2017年・WFB)。
外国企業の進出は、安定的な電力供給が困難であることから、自動車製造業などの大規模産業の直接投資が進まず、縫製業などの労働集約型産業が主な分野となっている。食品加工等でも、海外からの委託加工・生産が増加している。
日系企業のビジネス拡大意欲も高いが、前政権時代の閉鎖的な産業政策の影響が残り、人材確保に苦労することも多い。
労働力人口
労働力人口は3045万人(2015年)。産業別内訳は農林水産業70%、サービス業23%、製造業等7%(2001年、WFB)。
賃金水準が低いこと等から、近隣国への出稼ぎ労働が多く、非合法も含め、タイで約300万人、マレーシアで40万人が就労していると言われる。
6.経済状況
経済情勢
中国やベトナムに次ぐ企業の事業展開・投資先として「アジア最後のフロンティア」とされる。アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)に政権が移り、経済や労働市場を取り巻く状況は変化しており、労働政策の推進を通じた労使関係の円滑化がより一層重要性を増している。
外国投資の増加を背景として、経済成長が急速に進んでいるものの、一人当たりGDPは1,272米ドル(2017年)である。ASEAN10カ国のなかでは第9位で、最下位のカンボジア(1,140米ドル)を少し上回る。
7.組合活動
ナショナルセンター
ナショナルセンターとして2014年にミャンマー労働組合連合(FTUM)を再編したミャンマー労働組合総連盟(CTUM)が活動を続けている。FTUMは、1970年に結成され、軍事政権への抵抗を続けてきたビルマ労働組合連合(FTUB)が2011年に改称したものである。なお、このほかにもいくつかの動きがある。
(※)詳細は国際労働財団HPの「ナショナルセンター情報」参照。
産業別の状況
農業、繊維などの分野で労働組合の活動が拡大している。
8.支援組織、国際産業別労組(GUFs)の活動
現地協力・支援活動実施
日本JILAF、ドイツFESなどが協力・支援活動を行っている。
現地事務所設置
ドイツFESが現地事務所を設置し、活動を進めている。
ITUCミャンマー事務所による支援
2012年、ITUC(国際労働組合総連合)は、ミャンマーの民主化を推進し、労働組合の活動を支援するための現地事務所を設置した。
連合の支援活動
連合は、1993年、ビルマの労働組合を支援する方針を確認し取組みをすすめてきた。その拠点としてビルマ東京事務所を設置し、支援活動をすすめた(2001~2014年)。
ITUCの現地事務所設置に伴い、連合は、中嶋滋氏(元連合総合国際局長・元ILO労働側理事)を事務所長として現地に派遣した(2013年~2016年)。
9.労使紛争の状況
労働組合と労使関係の形成期
ミャンマーでは、40年以上にわたり、労働組合活動が禁止されていたため、労働組合と労使関係は現在、新たな形成期にある。
労働組合法の制定により、組合活動が合法化されて以降、労働組合数は年々増加してきているが、組合結成には登録が必要であることや、同一産業区分内で下位レベルの組合の10%以上(全国レベルでは、州・管区レベルの20%以上)の参加が求められることなどから、組織率は依然として低い。
労使紛争になった場合、まず労使間で交渉し、解決できない場合には郡、県、中央の順に、各レベルの仲裁評議会に持ち込まれる。労使紛争の中で多いのは、労働条件の改善、不当解雇などである。
10.最低賃金制度と労働・社会保障法制
最低賃金
2018年5 月から最低賃金日額4,800チャット(約380円: 8 時間労働)が国内全産業に適用されている。この水準は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国では最低の水準ではあるが、今後、必要に応じ見直しを行うこととされている。
労働・社会保障法制
主な労働・社会保障法制は次の通り。
「労働団体法」(2011年)(※)、「労働紛争解決法」(2012年)(※)、「最低賃金法」(2013年)
「賃金支払法」(2016年)、「店舗および商業施設法」(2016年)、「雇用及び技術向上法」(2013年)(※)、「社会保障法」(2012年)
(※)は国際労働財団の「アジア労働法データベース」に日本語訳がある。
労働法制の検討が続けられており、2020年過ぎには労働基準法の制定が構想されている。また、労働団体法、労働紛争解決法等の改正の検討が進行している。
11.日本のODA方針 (外務省・「国別支援方針」(2016年)より)
ミャンマーへのODAは、1988年の軍事政権化以降、2011年の民主化まで、制限あるいは停止が行われた。2012年からODAを再開、2016年のアウン・サン・スー・ チー国家最高顧問の訪日時に、日本は2016 年度から 5 年間で 8 千億円の貢献を表明した。
基本方針:ミャンマーの民主化及び国民和解、持続的発展に向けて急速に進む同国の幅広い改革努力を後押し、改革の配当を広範な国民が実感できるよう取り組む。
重点分野:①国民の生活向上のための支援(少数民族や貧困層支援、農業開発、地域開発を含む)、②経済・社会を支える人材の能力向上や制度の整備のための支援(民主化推進のための支援を含む)、③持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援など。
12.JILAFの事業
招へい事業:2013年から労働組合若手指導者の招へい事業を開始。今日まで34人(男性22人、女性12人)を招へい(2017年度末現在)。
現地支援事業:2013年からセミナーなどの協力・支援事業を開始。テーマは「労使関係・労働政策」(2013~2017年)。